報告:第4回国際日系対話

去る2025年7月10日から12日にかけて、アルジャー市のニッポン・カントリー・クラブにて、第4回国際日系人対話が開催されました。


これまでの第1回から第3回までは、ペルー日系人協会の主催によりペルーで開催されてきましたが、今年は、日伯修好通商航海条約締結130周年および文協創立70周年という節目の年にあたることから、文協の主催により、ここブラジルでの開催が実現しました。

このイベントには、以下の団体から50名が出席しました。

  • アルゼンチン:在亜日系団体連合会
  • ボリビア:ラパス日本人会
  • ブラジル:ブラジル日本文化福祉協会
  • チリ:チリ日系慈善協会
  • 北米(ロサンゼルス):日本文化会
  • メキシコ:日墨協会
  • パラグアイ:パラグアイ日系・日本人会連合会
  • ペルー:ペルー日系人協会

また、ブラジル側からは以下の要人らも出席しました。

  • 元駐ブラジル日本国特命全権大使 山田 彰 氏
  • 駐ブラジル日本国特命全権大使 林 禎二 氏
  • 在サンパウロ日本国総領事館総領事 清水 享 氏
  • JICAブラジル事務所所長 宮崎 明博 氏
  • パンアメリカン日系人協会会長 佐々木 ヴァルテル 氏
  • ブラジル日本文化福祉協会名誉会長 石川 レナト 氏
  • ブラジル日本文化福祉協会会長 西尾 ロベルト 義弘 氏

Foto 1: 第4回国際日系人対話に参加した文協およびブラジル代表団
Foto 2:ニッポン・カントリー・クラブに集まった各代表団のメンバーたち


開会式では、第1回から第3回までの国際日系人対話のコーディネーターを務めたペルー日系人協会の土亀平岡八重子氏の挨拶のほか、日本国外務省中南米局長の野口泰氏および海外日系人協会理事長の田中克之氏からのビデオメッセージも紹介されました。

元駐ブラジル日本国大使 山田 彰

まずは、山田彰元駐ブラジル日本国大使が「不確実性が高まる時代における日本と日系コミュニティ」と題した講演を行いました。

山田大使は、若者を対象とした日本の伝統的価値観に関する調査結果を紹介したほか、「世界はますます分断されつつあり、そのためにこそ、人間の尊厳を基本的な価値として取り戻すための協力が必要である」と述べました。

そして、世界最大規模となる約450万人の中南米の日系社会は、「信頼と相互尊重を育むための特別な土台を提供している。」と付け加えました。

ブルー・ツリー・ホテル・グループ代表の青木千恵子 氏

続いて、ブルーツリー・ホテルズ・グループ代表の青木千恵子会長が「親切とそのブラジルにおける変容」と題した講演を行いました。
その中で、自身の会社の日常業務において、従業員と宿泊客の間に見られる「親切」の実践に関する興味深いエピソードを紹介しました。

青木氏によれば、ブラジルにおける「親切」は、熱帯の地に植えられた盆栽のようなものであり、形は変わることがあっても、その根は日本に由来しているとのことです。
親切の実践を通じて、ブラジルと日本は国際平和の実現に向けた戦略的パートナーとなり得る、と語りました。

続いて、石川レナト文協名誉会長が「ブラジルにおける日本文化の価値」と題して、語りました。

2018年に、文協の若者たちによって結成された「文協ネットワークプロジェクト委員会」が、ブラジル日系社会に今なお受け継がれ、実践されている価値観を明らかにすべく、全国規模のアンケート調査を実施したと述べました。その結果、「責任」「学び」「誠実」「忍耐」「協同」「感謝」「親切」「敬意」という、ブラジル日系人に共通する8つの価値観が導き出されと話しました。


討論会:左から
サカモト・パブロ氏(チリ), 渡口 マルコ・トゥリオ氏(ブラジル), 栗田クラウディオ氏(ブラジル) ,
アキタ・ナオミ氏(パラグアイ),イケホ・ミユキ氏(ペルー)

続いて、ジャパン・ハウス・サンパウロのイベント運営デレクターで、文協の理事でもある栗田クラウジオ氏の進行のもと、4名の関係団体代表者が第4回国際日系対話の中心テーマについて討論を行いました。

参加者たちは、日本とのつながりの重要性を認識しており、それが結果的に各地域のコミュニティ同士のつながりも生むことを強調しました。また、日本文化の伝統を大切にする必要性と、日系ブラジル人、日系ボリビア人、日系ペルー人など、それぞれのアイデンティティが存在することを再確認することの重要性も指摘されました。

チリ日系慈善協会のサカモト・パブロ会長は、地元の日系コミュニティの分散について言及し、「価値観を守ることが、日本との関係を強化する。」と述べました。そして、「経済的な側面は必ずしも持続するとは限らないが、文化的な価値観は常に残る。」と述べました。

一方、ブラジル代表の渡口 マルコ・トゥリオ文協理事は、若者たちの団結を促し、現代の日本とのつながりを深めることの重要性を指摘しました。

パラグアイ日系・日本人会連合会のアキタ・ナオミ会長は、日系文化を再定義する必要性について述べ、「若い世代は日本文化に興味を持たない。それは彼らにとって意味が感じられないからだ。」と付け加えました。

ペルー日系人協会のイケホ・ミユキ副会長は、「日系性(nikkeidade)」を強化する必要性を強調し、次回のペルー国勢調査では、「日系(nikkei)」という選択肢が出自を示す項目に追加される予定であると報告しました。

続いて司会を担当した照屋ウーゴ氏は、2011年の東北大震災で起きた福島原発事故後の放射性物質を低減するための多核種除去設備 – ALPSによる水処理に関する映像を上映し、参加者全員に日本への理解に関するアンケートの記入を求めました。

そして初日の全体会議は、各国代表が自国の今後の展望について述べる言葉で締めくくられました。

意見発表の最後に、ラパス日本人会のハダ・カルメン会長氏による提案が全会一致で承認され、ペルー代表団の土亀平岡八重子氏が今後の国際日系対話のコーディネーターを引き続き務めることとなりました。

本会議終了後、各国代表団はモルンビ地区にある在サンパウロ日本国総領事公邸での歓迎懇親会に向かいました。

総領事公邸にて

2日目のプログラムは朝早から開始されました。

前日の全体会議に関する議事録の朗読および承認がなされた後、各国代表団は、山田彰大使とそれぞれ約10分間ずつ対談の時間を持ちました。

昼食後、参加者たちはジャパン・ハウス・サンパウロをおよびブラジル日本移民史料館を見学しました。

最終日となる3日目のプログラムは、県連主催の「第26回日本祭り」の見学に充てられました。日本祭りの開会式への出席に始まり、その後は各県人会が提供する郷土料理の試食を兼ねた昼食会が行われました。

なお、今回の第4回国際日系人対話では、青年向けの特別プログラムも用意され、同時進行で行われていました。

各国代表団共に来伯した青年たちは、イベント初日の午後には、山田彰大使による「未来に向けた日本の技術」と題した講演を聴講した後、書道教室に参加したほか、「私の責任」をテーマとした座談会に出席。

イベント2日目に日本祭りを見学し、土曜日にはカンポス・ド・ジョルドン市の視察を行いました。


Galeria de fotos:


第4回国際日系対話
主 催 : ブラジル日本文化福祉協会

後 援 :
在サンパウロ日本国総領事館、国際協力機構 – JICA、ニッポン・カントリー・クラブ、宮坂国人財団、ファゼンダ・アリアンサ、Arsetofficium通訳翻訳サービス

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