報告:下地衆議院議員による四世ビザ説明会

mikio shimoji-4記:2018年8月17日
文協、県連、援協、日文連、商工会議所、国外就労者情報援護センター共催の下地幹郎衆議院議員による四世ビザについての公聴説明会が8月5日(日)午後4時から文協ビル2階の貴賓室で行われました。

今回は、昨年7月に開催された公聴説明会に続く、第2回目の開催となりました。
「日系四世受け入れのための新制度の概要と展望」と題した今回の公聴説明会は、新制度「案」の段階だった第1回目とは異なり、新制度運用開始後の公聴説明会となりました。当日用意した120人分の椅子はすべて埋まり、その内約3分の1は当事者となる日系四世で占められました。また参加者の中には飯星ワルテル連邦下院議員や、各日系主要団体の代表者の姿もありました。

挨拶に立った文協の呉屋春美会長は「日本政府に対し日系6団体の連名で、四世ビザの条件緩和を要求したが、全く聞き入れられなかった。厳しい条件が課されたままの新制度は、到底納得がいかない。」と述べ、集まった人々の気持ちを代弁しました。
それに対して下地議員は「初めて伯国に訪問した3年前に日系社会の方々が『四世も三世と同じように日伯間を行き来できれば』と切望していることを知り尽力したが、自分の思いと日本の政治・行政の考え方が異なった』」と説明し、「様々な条件が課されたのは四世の皆さんを丁寧に受け入る為。制度的に不十分なことは承知しているがまずは制度スタートが最優先であり、新制度を始めたことに意義があった。」と理解を求めました。また「皆さんの意見が届けば制度が変わる可能性がある」「皆さんの声を聞きながら、随時検討しつつより良い制度にしていきたい」と、これからの展望に含みを持たせました。

下地議員による説明の後は質疑応答の時間が設けられました。特に質問が集中した下記5項目に対する下地議員の回答は以下の通りです。

【家族帯同不可について】

ディヴィッド・コスタさん(28、四世)は「多くの四世は結婚し、子供もいる。この制度はそういう人たちに厳しい」と主張しました。それに対して下地議員は「家族と一緒が良いのは、私達も重々認識している」とした上で、「四世本人がまず日本の生活に慣れる期間を設ける意味でその条件を設定した」との説明がありました。「慣れてない時に家族を呼ぶと負担が増える。三世の時に問題が起こった」と話し「数年経って四世たちが日本の環境に慣れた後に家族を呼ぶかを検討する」とも述べました。

【18歳から30歳までという年齢制限について】

アダニア・ステファニー・ユキさん(18、四世)は、「下地議員は昨年の説明会で私が質問した時に、『四世も120歳まで受け入れる』と言った。話が違う」と指摘しました。同議員は「できないことを口にしてしまったと反省している。」と謝罪したうえで、18歳から30歳は「日本での学びを十分吸収できる年齢」とし、「今後は30歳以上の四世から、31、32歳で利用できないのはおかしいという声がブラジルから多数上がれば日本側も検討する」と説明しました。

【入国前に「日本語能力N4」の条件が必須とされることについて】

「来てから苦労するのでなく、来る前に苦労して、来日後に充実した生活をして欲しい。N4レベルの語学力があった方が仕事や勉強、生活面で様々な機会が広がる」と必要性を訴えました。また現在日本では、中国やミャンマー、ベトナムからの外国人労働者の失踪者が年間1万人いることに触れ、「職場の日本人との意思疎通ができないことが失踪の大きな原因。事実、日系三世までの制度でもその問題がたくさんあった。それを再発させないためにこの条件をつけた」との説明がありました。また参加者からは「日本語の代わりに英語能力ではだめなのか」などの提案も出されました。

【サポーター制度について】

※サポーター制度とは、責任を持って四世を支持するために導入された制度で、サポーター1人につき2人までの四世の引き受けが可能とされる。サポーターの連絡先は法務省のサイトに公開され、四世本人から連絡をとれば、就労先も紹介する。日本在住の親(三世)は、四世である子の受け入れサポーターになれるとされる。また、その他にもサポーター制度はボランティアで募集しており、日本国籍を持つ、あるいは永住権、特別永住権を持っている20歳以上の個人・法人が対象と同議員は説明。ただし、日本側のサポーター登録の広報が遅れていて、未だにサイトは立ち上がっておらず、時期すらも未定。またこの制度では派遣会社もサポーターも仕事仲介料をとることが禁止されている。

下地議員は「サイトの立ち上げを急いではいると弁明し、サポーター制度利用者数上限は4千人。この数に達すれば制度が継続される。皆で成功させましょう」と呼びかけたが、この制度の曖昧さが露呈されただけに終わりました。

【滞在期限が5年間のみとされることについて】

同議員は、努力次第で2年を目処に延長を検討する考えを示しました。参加者からは「空手の段位など日本文化への習熟度を証明できる人は滞在を延ばせないか」という意見が出されました。

***まとめ***

下地衆議はこの制度について「技能実習制度とはまったく違う考え方によるもの。四世に日本を好きになってもらうための制度」と繰り返しました。また「四世は日本との距離が遠くなっている。だからこの制度を作った」とし、「この新制度によって日本と四世がつながる窓口はできた」との説明がされました。ただ、アダニア・ステファニー・ユキさん(18、四世)は「四世は日本から遠いと言われたが、私は日本に幼い頃住んでおり、中学生でこちらに戻ってきた。日本の文化は分かっているし、家族も日本にいる。」と話し、サントス英治さんも(四世、22)「自分は日本生で生まれた。中学卒業後に単身でブラジルに渡り、サッカーチームで選手として活動してたが昨年膝の故障により選手生命を絶たれ、今は日本に戻ることを考えている。家族はみな日本、僕も日本のほうが長い。」とし、マルレーネ・コスタ・コウガさん(48、三世)も「子供2人は日本で生まれ育った。だから日本に戻りたがっている。」と話しています。

このように日本で生まれ育った多くの四世は、言葉や生活習慣における問題は一切なく、それどころか自分自身は「日本人」としてのアイデンティティを兼ね備えているにもかかわらず定住ビザが許可されない憤りの解決方法を示して欲しいと願っているのです。

ここで浮き彫りになってきたのが、そもそもこの制度に対しての趣旨が、ブラジル日系社会と日本政府でかなりの相違があるということです。
「日系三世が許可されるの同じように、日系四世も日本で勉強や就職をしながら暮らしたい」という日系社会側の希望に対し、日本政府は 「日系四世に、日系四世受入れサポーターからの支援を受けながら日本文化を習得する活動等を通じて日本に対する理解や関心を深め、日本と現地日系社会との架け橋になる人材育成を目的とした制度。帰国後は、日本と現地日系社会との架け橋として活躍することを期待するとしています」(法務省HPより)としているため、日系社会側からすると自分たちが要望しているものとは180度異なった珍紛漢紛(チンプンカンプン)な制度が出来上がってしまったという印象が否めません。

この意識の相違がある限り、話は平行線のままです。これを正すため、日系社会も根気強く日本政府に対し要望を伝えいく必要がありそうです。

日系四世受け入れ制度についての意見や要望は、

在サンパウロ総領事館の査証班(メール=cgjvisto@sp.mofa.go.jp)まで。

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